キリム

キリムとは、トルコ語で平織りのことを指し、絨毯のような毛足（ギャベ）のない織物のこと。テントで暮らす草原地帯の遊牧民や山岳地帯の牧畜民の生活から生まれた実用的な織物です。敷物としてだけでなく、暑さ寒さや砂から身を守ったり、部屋の間仕切りや暮らしを彩る装飾に、運搬や農作業用の袋、布団や衣類の収納箱、塩や穀物などの収納袋、ゆりかごから棺まで、実に様々な用途に使用されて来ました。家畜とともに常に移動して生活する遊牧民にとって、キリムは無くてはならない生活必需品であり、大切な財産でもありました。
キリムの歴史は絨毯より古く、紀元前7世紀頃のトルコ、アナトリア地方にキリムの残存が発見されています。現存する最古のキリムは16世紀のものと言われていますが、現在私たちが手に入れることのできるキリムは、100年以上前に織られたアンティークキリム、40年〜100年前に織られたオールドキリムと呼ばれるキリムと、近年織られたキリムに分けられますが、20世紀以降、西欧の文化の広まりと共に遊牧で生活する民族が激減したため、アンティークキリムやオールドキリムは手に入り辛く、大変貴重なものとなっています。

キリムに織り込まれる多彩な柄には、地域や部族に代々口伝で伝えられる伝統的な図柄が多く見られます。自然や動物、家々に代々継承されている模様、部族や地域特有の文様、宇宙的なひらめきや幸せ、豊穣、魔除けなどを願うシンボリックなモチーフや幾何学的模様などが複雑に組み合わされた美しいデザインと手仕事の中に、織り手の女性たちが織り込んだ様々なメッセージや秘められた思いを想像できることがキリムの魅力でもあります。